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2012年6月5日火曜日

マーケターを笑うな


山本直人『マーケターを笑うな! 「買いたく」させる発想法』朝日新聞出版、2010

タイトルの通り、マーケティングではなくマーケターに注目し、彼らが何をなしているのか、ひいてはマーケティングとは何であるのかが書かれている。同時に、コトラーを中心としたマーケティング論にも目配せがなされており、具体的かつ底流として理論的な考え方を見て取ることができる。

マーケターの位置づけが興味深い。「マーケターは、ガンガン攻撃する経営者と、コツコツ頑張る社員の、どちらとも異なるポジションにいる(164頁)。」いいえて妙であるように感じる(続く一文のほうがなるほどと思わせるが、それは実際に読んだときに)。この地位づけを意識したマーケティング論は、きっとマーケターの為になる。

個人的に最も興味深いと感じたのは、優れたマーケターは辞書を書き換える、特定の項目の下にある定義を増やしていくという考え方である。まずもって、項目それ自体の追加は、技術的な革新を必要とする(例えばニンテンドーDS)。マーケターの役割は、この技術的な革新を実現するということにあるわけではない。それは技術者の役割である。これに対して、マーケターの役割は、こうした項目の下で、例えば新たに「大人でも遊べる」という定義を付け加えていくことであるとする。これは、まさにブランドがマーケティング論で重視される理由であろう。もっといえば、最初の命名は技術的な革新と不可分であるが、やがて確定記述の束は追加され、いつしか、最初の命名の根拠を失ってもなお、ブランドが流通し続けるようになる。こうしたブランドの構築こそがマーケティングの役割だといえる。

その他具体的なアイデア創出の為に示される様々な考え方も面白い。大きくするか、小さくするか。くっつけるか、分けるか。具体的な方法だが、これを知っていることによってアイデア創出の幅は変わってくるに違いない。