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2012年5月21日月曜日

ひたすら読むエコノミクス


伊藤秀史『ひたすら読むエコノミクス』有斐閣、2012

ポップなデザインの教科書である。一般的な経済学の教科書とは異なり、ずいぶんと読みやすい内容になっている。一般的な経済学の教科書とは、おそらく内容も少し違う。冒頭で述べられている通り、企業の戦略に焦点を当てているところが特徴的だろう。経済学というと、特に初期の場合は、企業を点のように捉えるところに一つの特徴があったが、むしろ今では、企業そのものを取り扱えるようになっている。この点では、まさに企業戦略や競争戦略に関わる人々にとって重要な一冊である。

それにしても、読んでいて自分自身再確認したのは、学問そのものを学ぼうとしてしまうと、実に苦痛だという事である。経済学にしても,経営学にしても、社会学にしても、用語をひとつひとつ覚えていく事はほとんど不可能に近い(若ければできるのかもしれないが)。大事な事は、おそらく、学ぶ事を手段に置き換えるということだろう。例えば、自社の売上を上げたいという目的意識の下で、書籍を読む必要があるというわけである。これほど平易で読みやすいはずの教科書ですら、目的を欠くとうまく読み込めない。逆に言えば、いかに難解であろうとも、目的さえはっきりしていれば、読めるのではないだろうか。

経済学の教科書の多くが読みにくいのは、数式が多いからではなくて、多分、それを読む目的や理由、意味が自覚されていないからである。数式が抽象的でわかりにくいという指摘も、大体同じ問題だろう。それが自分にとってどういう意味があるのか、自分で判断する能力がないのだ。何の為に読むのか、自分の能力を問い直す必要があるのだろう。

2012.05.31
著者のHPを拝見した。教科書ではなく、副読本ということでした。
「詳しくは以下で提供する第1章で説明していますが,この本は教科書ではありません.「副読本」として使われることを想定しています.」
『読むエコ』ホームページ